小児の腎疾患の管理のポイント
小児期にみられる腎疾患

◆急性腎炎症候群◆
急性期症状が消失すれば安静緩和へ
入院中の制限緩和は慎重に
血尿の持続だけで制限はしない
運動部の部活は発症3ヵ月後くらいから
概念
発症が明らかで、血尿、蛋白尿、高血圧、糸球体瀘過値の減少、浮腫が急激に出現
主な組織病型
管内増殖性糸球体腎炎
膜性増殖性糸球体腎炎
IgA腎症
半月体形成性糸球体腎炎

 特徴として浮腫、血尿、高血圧などを伴って急激に発症してくる腎炎群で、その中には小児の代表的な疾患である溶連菌感染後の急性糸球体腎炎などがふくまれる。
 この一群は小児の場合、その大部分が治癒していく極めて予後のよい疾患であるが、一部に急性腎炎様の発症をする各種の慢性腎炎が混在することがあり、その鑑別が大切になってくる。
 この両者は臨床所見に加えて、蛋白尿や円柱尿などの尿所見、さらに血清補体値の推移などで鑑別されるが、発症後1〜2ヵ月で急速に改善していくのが一般的な特徴である。
 急性腎炎の初期には浮腫、高血圧、さらに腎機能低下など、かなり激しい変化がみられ、組織上もこの時期には強い変化があることから、このような症状や所見のある場合には安静が必要となる。
 また、予後がよいので運動制限も一時的であり、制限緩和を急ぐ必要はない。しかし、これらの急性期症状が消失あるいは初めから認められない場合は、安静の意義は少ないと考えられ、とくに、血尿のみが残っているものについては、その他の腎炎の場合でも組織変化は軽いので、そのマイナス面を考慮すると運動制限はできるだけ避けたほうがよい。

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◆慢性腎炎症候群◆
発見・発症当初の管理は厳しく
悪化がなければ基準に従い緩和
血尿と蛋白尿がともに増強する場合は要注意
概念
蛋白尿、血尿、高血圧が認められ、徐々に腎不全に陥る進行例(進行期)と、それ以外に腎機能正常の非進行例(固定期)が含まれる。
主な組織病型
IgA腎症
巣状またはびまん性増殖性糸球体腎炎
膜性増殖性糸球体腎炎腎炎
膜性腎症
巣状糸球体硬化症
硬化性糸球体腎炎

 浮腫や肉眼的な血尿などの症状がでてきて見つかるものもあるが、現在の日本では学校検尿で偶然に発見される無症候性のものが多くなっている。
腎機能、血尿、蛋白尿の程度により許可する運動を決めるが、血尿に関しては蛋白尿と同じように考えず、血尿だけの症例では例え慢性腎炎が見つかっても、腎機能の組織変化が軽いことが知られているので、あまり制限する必要はない。
 慢性腎炎はその種類の違いや組織変化の程度の違いなど、考慮しなければならない要因も多く、運動制限とその予後の関係については今後さらに検討していく必要があると考えられる。
しかし、運動制限が厳しいほど、心身両面でその子供が被る不利益が大きいので、管理にあたっては十分な配慮が必要である。

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◆ネフローゼ症候群◆
尿蛋白陽性の時と、ステロイド剤大量投与の時は慎重に
制限を緩和する場合は運動能力にあわせて段階的に
合併症がある場合にはその病気の運動処方に従う。
高血圧:軽〜中等度では運動による改善が期待できる。ただし、激しく人と競うような運動はさける。
骨粗鬆症:整形外科医の助言を受け、必要な場合は椎骨骨折の危険がある走り高跳び、跳び箱、柔道などは避ける。
 運動部の部活は原則的に許可するが、ステロイド剤服用中のときは椎骨に負担がかかると考えられる。柔道、水泳のバタフライなどは避けるとともに、楽しむ程度の練習内容にとどめる。
 水泳は浮力の影響を受けて骨に対する負担も軽いので、区分Eのものには積極的に取り入れる価値がある。ただしバタフライは禁止する。
概念
大量の蛋白尿、低アルブミン血症と、しばしば浮腫、高コレステロール血症を伴う症候群である。
小児ネフローゼ
症候群の
診断基準
1. 蛋白尿: 3.5g/day ないし0.1g/kg/day、または早朝起床時第一尿で300mg/100ml以上の尿蛋白を持続する。
2. 低蛋白血症:(血清総蛋白量として)学童、幼児6.0g/100ml以下、乳児5.5g/100ml以下
(血清アルブミンとして)学童、幼児3.0g/100ml以下、乳児2.5g/100ml以下
3. 高脂血症:(血清総コレステロール値として)学童250mg/100ml以上、幼児220mg/100ml以上、乳児200mg/100ml以上
4. 浮腫
5. 注意点
   
i.
上記の蛋白尿、低蛋白(アルブミン)血症は、本症候群のための必須条件である。
ii.
高脂血症、浮腫は本症候群診断のための必須条件ではないが、これを認めればその診断はより確実となる。
iii.
上記の蛋白尿の持続とは3〜5日以上をいう。
主な組織病型
微少変化型ネフローゼ症候群(リポイドネフローゼ゙)
巣状糸球体硬化症
膜性腎炎
びまん性増殖性糸球体腎炎
膜性増殖性糸球体腎炎

 小児のネフローゼ症候群は特発性と呼ばれ、ステロイド剤によく反応するタイプのものが多い。
 特徴としては、一日数グラム以上の蛋白尿、低蛋白血症、浮腫、高コレステロール血症などであるが、ステロイド剤の投与により、これらはほとんどの場合は正常化してくる。しかし、再び同様の状態になる「再発」の多いのが大きな特徴である。
 今までは投薬中のネフローゼ児の運動はせいぜい軽いものに限られ、体育授業が普通に許可されるのはステロイド剤が中止されてかなり経過してからということで、発症後少なくとも1年ぐらいは許可されないことが多くみられた。
 したがって、心理的な問題や社会性が育ちにくいなどの問題も生じてくることが懸念され、管理の在り方が見直された。
 これは、寛解中に普通の子供と同じように運動したり、遊んだりできるようになったことで、子供としての明るさを取り戻すといった現実がその管理の在り方に自信を与えた。

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◆無症候性蛋白尿・血尿症候群◆
1.
蛋白尿+血尿(混合型)の症例
2.
血尿単独例 1)肉眼的血尿発作を繰り返す症例
      2)家族性に血尿が認められる症例
3.
持続的低補体血症を示す症例
4.
腎機能の低下傾向を示す症例
5.
腎疾患の既往や理学的所見(高血圧、浮腫、排尿痛、紫斑、低身長、蒼白、  その他)の存在する症例

1)蛋白尿単独群
腎機能、高血圧、蛋白尿の程度に加えて、円柱尿の程度が運動処方決定のよい指標となる。
 この中に含まれるものとしては、体位性蛋白尿(起立性蛋白尿)がもっとも多い。就寝前排尿後の早期第一尿の検査では、普通は陽性とならないが、実際にはかなりの数が蛋白尿陽性で見い出されている。
 これ以外では血尿を伴わない腎炎群や、稀ではあるが先天性の尿細管性蛋白尿や泌尿器科的疾患に伴う蛋白尿単独例を認めている。
 運動処方という点からすれば、腎機能低下や高血圧の有無と並んで尿比重と沈渣所見が重要な指標で、とくに正しい手法で作成された尿沈渣における円柱尿の程度は、腎炎群の鑑別診断には大変有用となる。
 腎炎群については腎機能、蛋白尿の程度に応じて運動処方を行い、それ以外の体位性蛋白尿など腎機能低下のないものには運動規制はまったく不要で、経過を見て行くことが大切となる。
2)血尿単独群
長期的な予後から考えれば、ほぼすべての症例で運動制限はすべきでないと思われる
 学校検尿で発見される多くのものがこれにあたるが、すでに述べたように、この中には慢性腎炎に属するものもあるが、その組織変化は軽いといわれている。
 厚生省研究班で行った5年以上の長期予後調査でも、発見時1視野20個以上の血尿単独例は慢性腎炎も含めてその予後は良好で、平成7年の長期の経過で運動制限による改善効果は初診時血尿が中等度群、高度群のいずれにおいても、また最終診断名が腎炎群、血尿群のいずれにおいてもまったく認められていない。
 運動制限に伴うマイナス面を考慮すれば、今後は血尿単独例に運動制限を加えることは避けなければならないと考えている。
3)蛋白+血尿群
原因疾患による疾患別の管理を行う
 蛋白尿と血尿が共に認められる場合には、腎炎などの腎疾患の可能性が極めて高いとされ、従って、腎機能、高血圧、蛋白尿、円柱尿の程度などを参考にして、ときには腎生検を実施し、原因疾患を明らかにして疾患別の運動処方を行うことが必要である。

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管理区分表

管理区分
慢性腎炎症候群
無症候性血尿
または蛋白尿
急性腎炎症候群
ネフローゼ
症候群
A 在宅 在宅医療または入院治療が必要
------
在宅医療または入院治療が必要 在宅医療または入院治療が必要
B 教室内学習のみ 登校は可能だが腎機能の低下または蛋白尿・血尿が(++)以上あるもの、もしくは病状が安定していない
------
回復期で蛋白尿を認める 登校は可能だが病状が安定していない
C 軽い運動のみ 血尿と蛋白尿が(+)程度、蛋白尿または血尿が(++)程度 無症候性蛋白尿および蛋白尿・血尿で蛋白尿が(++)以上 発症後3ヵ月以上経過しているもので蛋白尿陽性 病状は安定したがステロイド治療中のもの
D 軽い運動および中等度の運動のみ 血尿単独もしくは蛋白尿(+)程度で変動が少ない *無症候性蛋白尿で常に蛋白が(+)
*無症候性血尿で血尿が(++)以上
*それ以下の尿所見で発見後3ヵ月以内
発症後3ヵ月以内でわずかに血尿が残るもの。3ヵ月以上経過してもかなりの血尿が残り、病状が不安定 ステロイド隔日投与中で寛解が維持されている
E 普通生活 血尿(+)程度、もしくは血尿(+)で蛋白も(±)程度で安定している 血尿(+)もしくは蛋白尿(±)以下で尿所見が安定している 発症後3ヵ月以上経過して微小血尿が残るもの、または尿所見が消失したもの ステロイドの投与を中止して寛解が維持されている

(注)
 慢性腎炎症候群とは、病理組織学的に慢性に経過する腎炎であることが明らかな症例、およびその臨床経過からそれが推定される症例をいう
 無症候性血尿または蛋白尿とは、健康診断における検尿で血尿または蛋白尿が発見され、その他の理学的所見、臨床検査所見に異常を認めず、腎病理所見が明らかにされていない症例をいう

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