進学・進級後のこの季節、子どもの朝起きがけの尿を家庭で採取、学校に集めて検査機関で尿たんぱくと血尿を調べるのが学校検尿。一次、二次とあり、２回目の２次検尿でもひっかかった場合、医師らによる三次精密検診が行われる。そこで腎臓病が疑われたら腎臓専門医の診断・治療になる。

　急性腎炎は学校検尿を待つまでもなく、浮腫、高血圧、肉眼的血尿などの症状でたいてい家庭で異常に気づく。簡便な検尿でたまたま見つかるのは、はっきりした症状が出ていない段階での慢性腎疾患である。学校検尿で分かる慢性腎疾患のほとんどはIgA腎症。成人の慢性腎炎でも日本では一番多い。

　「IgA（免疫グロブリンA）は人体にあるたんぱく質の一つで、体内に入った異物を認識してやっつける免疫の働きをしている。原因ははっきりしていないが、そのIgAが血液をろ過して体内の老廃物を尿にして排泄する腎臓組織に沈着、腎臓機能を低下させるのがIgA腎症。進行すると腎不全に至り、透析療法や腎臓移植が必要になるケースもある」

　学校検尿で見つかる小・中学生のIgA腎症は、日本各地で0.012〜0.04％、年間10万人当たり12〜40人。全国集計のデータはないが、発見頻度を平均0.025％、検尿受診者2000万人として、毎年5000人、この25年間で12万5000人に上ると推定されている。（93年調査）。３年生以下の低学年にはほとんど見つかっておらず、発症は４年生以降から中学生である。

　IgA腎症の疑いがあれば専門医にかかり、腎臓組織の一部を取って調べる「腎生検」を受ける。１〜４度の４段階のランクづけがあり、「１〜２度の軽症ケースでは経過観察は必要だが、放っておいてもまずは治る。３〜４度の場合は、現在は数種類の薬を投与する積極的治療が採用されている」。約１ヵ月入院、その後は通院で１年間経過をみる。これで少なくとも病気の進行を抑えることが出来る場合が多いという。

　実際、千葉市の学校検尿を追跡調査した専門医の報告によると、積極的治療の効果が表われている。同市の学校検尿で、75〜92年の18年間（総受診者約30万人）に見つかったIgA腎症は121例（全体の0.04％）。92年に調べた結果、発見初期に積極的治療が受けられなかった63人のうち5人が腎不全に陥っていたが、積極的治療を受けた残りの58人は腎不全に至っていないことが分かった。

　しかし、全国的には子どものころにかかったIgA腎症が慢性的に経過して、大人になるまで引きずっているケースが約30％、その半数は腎不全から透析療法に至っているとみる。そして「大人にまで持ち込むと、就職、結婚・妊娠・出産と人生で一番忙しい20代に透析に移るリスクが非常に高い」と警告する。学校検尿を侮らず、腎疾患と診断されたら、すぐ治療を開始、生活管理を心がけなければいけない。

　最後に、学校検尿で注意すべきポイントをあげると、

の３点である。