生活規制を行うようになって、精神的な問題にはどう対処したらいい？

学校での検尿は何のために行われるのか

　小児の腎臓病の約半数は慢性に経過する腎臓病であり、最近の生活指導法や治療法の進歩によって、早くに見つけて早くから適切な生活管理と治療をすると、かなりのこども達において、その悪化を阻止することができるうえに、その一部は全治させることもできることが判ってきました。そこで、その早期発見のための検尿が全国的に普及したわけです。この学校を中心として行われている健康診断のための尿検査は、昭和４８年から始められています。

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学校での検尿どのように行うのか

　腎臓病検診システムとしての尿検査の方式として全国的に普及しているのは、早朝尿を家庭で採取して、これを学校に集めて検診機関に委託、検査する方法です。

　ほとんどの地域で、１回目と２回目の検尿は検診機関が担当していますが、２回続けて異常がみられた場合に行う第３回目の精密検査は、異常を指摘されたこどもの家族がかかりつけの医師や学校医を受診するシステム（B方式）がつくられているところと、異常を指摘されたこども達を集団で精密検査してくれるシステム（A方式）がつくられているところとがあります。

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１次・２次検尿の注意

　学校から配布された尿検査のお知らせを良く読みましょう！

　正しい検査結果を得るには、決められた方法で採尿することが最も大切です。

――◆尿の採取の仕方◆――――――――――

　検査の前日に、夜寝る直前に必ず排尿し、当日は起きたら真っ先にトイレに行って、まず少し排尿し、その後の中間尿を採取してください。（これを早朝尿といいます）
　
　学校に尿を持って行くのを忘れないようにといって、前日に採尿してはいけません！

　それでは正しい結果を得られないからです。一日おくと、尿中にある細菌が繁殖して蛋白が偽陽性になったり、血尿が消失したりするからです。また、早朝尿を忘れた場合、やむを得ず学校で採取することがありますが、これも良いことではありません。早朝尿でないと健康児でも体位性蛋白尿という蛋白尿がみられることがあり、「陽性」になることがあるからです。

　生理日に採尿して検査すると、蛋白尿や血尿が陽性となることがあります！

　生理日の前後１〜２日は、はなして採尿・検査が可能であれば、もっともよいのです。しかし、集団検尿の制約上、別日程がとれないことが多いので、腎炎や無症候性血尿を見逃さないために、生理日で　あっても採尿して提出し、正しい判定は２次検尿、３次精検にゆだねるのがよいでしょう。

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２回の検尿で、いずれも陽性といわれたら？

　２回の検尿で陽性と言われたお子さんは、必ず精密検査を受けましょう。

　１・２次検尿で陽性と言われても、直ちに腎臓病ということではありません。本当に腎・尿路系に異常があるのかどうか、あるとすればどんな病気なのかを細かく診断して、早くから適切な生活指導や治療を受けることが大切です。

　精密検査では、医師による問診・診察の後で、早朝尿と外来尿（検診場所で取った尿）および血液の検査を行います。血液検査の種類は医師や地域によって、多少の違いがあります。

　集団で精密検診を行っている地域では、学校医、専門医、教育委員会などで構成する判定委員会でその成績が検討され、暫定診断と生活管理区分が指示され、学校を通して生徒と家庭にお知らせします。

　このような精密検診の結果、さらに専門医による精密検査が必要な場合もあります。主治医とよく相談し、必要な検査を受けましょう。また、その結果は、担任や養護教諭の先生に報告し、学校生活が十分楽しく送れるよう緊密な連絡を取りましょう。

判定委員会のない地域では、２次検尿陽性の生徒は、個々に主治医や学校医による精密検診を受けるわけですが、その結果も同じように学校に知らせ、適切な学校生活が送れるように先生方と相談してください。

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尿異常のこどもの検診で、どのような病気が見つかるか？

　学校検尿で陽性と判定され、集団精密検診で異常といわれて専門医の診断を受けることを勧められたこども達は、専門機関で精密検診を受け、その成績が報告されています。

　専門医による精密検診で以下のような結果がでています。

　そして、小児内科的な疾患と思われたこども達の大部分が、軽い慢性に経過する腎炎ですが、この様なこども達を長期にわたって観察した結果、次のようなことが明らかになっています。

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尿異常を持つお子さんにたいして生活規制をする目的は？

　学校検尿異常者の治療に関しては、現在のところ一部の病型を除いて速やかに治癒させうるほど有効な薬物治療は残念ながらありません。したがって、生活管理により悪化を防ぎ、自然に良くなるのを期待するというのが現状です。

　とくに尿異常の程度の強い人の場合は、腎臓の病変も強いので、この生活管理が重要となるわけです。

　しかし、尿異常の程度が軽い者においては、必ずしも日常生活の規制を加えなくても自然治癒するものも多数あります。

　たとえば、血尿のみの尿異常者では、その長期にわたる観察結果から、尿所見が悪化するものは少なく、多くは年数とともに改善、消失していくようです。

　このように、軽微な尿異常者や血尿のみの尿異常者にたいしては、生活規制をしなくても自然に治癒する人が多いわけですが、全員間違いなく治癒するというわけでもありません。その後、悪化・進行しないかどうか、尿検査を継続的に受けていくことが、とくに大切です。

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学校検尿で異常があるといわれたこどもを、腎臓病専門医に連れていくタイミングは？

　学校検尿で陽性といわれても、そのこどもがすぐに腎炎というわけではありません。

　心配な場合はこどもの腎臓病の専門の医師の診察を受けて、どのような病型かを診断してもらい、それぞれの病型にあった日常生活の指導や治療をしてもらうことをおすすめします。

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検尿陽性者の治療は、現在どのようになされているのか？

　腎臓病の治療には、以前より安静・食事・薬物療法がその基本とされています。安静すなわち生活規制を加えながら、腎臓病の悪化・進行を防止していく必要性があります。

　薬物療法についてですが、学校検尿の目的が早期発見・早期治療にあるとはいえ、現在のところ、いろいろな病型の腎炎のすべてに特効的に効果を持つような薬物は見つかっていません。

　しかし、幸いなことに、この学校検尿をきっかけとして、以前においては難治性と考えられていた一部の慢性腎炎に対しては、有効な薬物が見いだされて、腎障害の進行を抑えることが可能となってきています。また、腎炎がどうして起こるのかについての数多くの研究から、徐々ではありますが、その病因も次第に明らかにされつつあります。腎炎の原因がさらに詳しくわかりますと、確実な治療法が、もっと導入されてくるものと思います。

　このように、今のところはすべての腎炎に効果を示すような薬物療法はないわけですので、悪化する恐れのある尿異常者にたいしては、生活管理により腎機能の悪化を防止するよう努力しなければならないことになります。

　そして、この効果あってか、最近では、小児期の慢性腎不全の原因疾患として慢性腎炎の占める割合が減少し、これに代わって、生まれつきの腎臓の異常による腎不全例の比率が多くなってきています。

　これも、学校検尿の一つの大きな成果と考えられます。さらに、これら早期に発見された慢性の腎機能障害を持つ患児にたいしては、食事療法をはじめ他の生活管理が有効に発揮され、慢性腎不全への進行防止がはかられているのです。

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検尿陽性者にたいして、どのような食事を与えたら良いか

　腎臓病患者にたいして、食塩・蛋白質・刺激物の摂取制限が行われています。

　食塩摂取を制限する意味は、体にむくみがある、高血圧がある、尿が十分に出ないなどの腎機能障害がある時に、大変重要な治療法の一つとなります。

　しかし、それ以外の無症状で腎機能正常な人の場合には、食塩制限は有効ではありません。

　逆に、発育期にある小児においては食塩摂取が必要ですので、いたずらに食塩制限することは不利な結果を招くことになります。食塩を制限することが、直接に腎臓での病変の改善に役立つものと誤解してはなりません。

　あくまでも、症状の改善ないしはそれ以上の腎臓への負担をなくし、腎機能の改善ないしは進行を防ぐための、補助的な治療の一つであることを理解しておきましょう。

　しかし、慢性の腎臓病の中には塩分を尿中に失うものもあり、食塩を積極的に投与しなければならないこともあります。

　このことから、前にも述べたように、学校検尿で発見された無症状で、まず腎機能障害はないと思われるこどもにたいして、食塩制限を考慮することはほとんどないと言えます。

　蛋白質の摂取を制限することは、尿中にその老廃物を十分に出せない腎機能障害の強い腎臓病患者に必要ですが、腎機能の正常な学校検尿陽性者ではこれを考慮する必要はありません。　

　よく腎臓病には香辛料などの刺激物は悪いという考えで、こどもにとって好物である「カレーライス」をはじめ、種々の香辛料を含む食事を与えることを制限する方があります。

　これは、特に根拠があって言われることではないので、自由に摂取させて、さしつかえありません。以上から、食事制限は、何らかの腎臓病に関係する症状があるとき、腎機能障害のあるときに、初めて必要となると考えて良いでしょう。

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